小林泰三『失われた過去と未来の犯罪』-長期記憶を失いメモリー頼る生活を強いられた人類のお話

スポンサーリンク

f:id:yamadaenikki:20180805174924p:plain

ろりこんブロガーこと山田絵日記です!!


今回は小林泰三さんの『失われた過去と未来の犯罪』について書いていこうかと思います^^


以前、『小林泰三さんのおすすめ作品紹介』の記事でご紹介させていただきましたが、今回はガッツリ本書について語りますのでお付き合いください。


www.yamada-books.com


本書は一貫して、「記憶」、「人格」または「魂」をテーマとしていて、読後非常にこのテーマに関して考えさせらせます。


SFミステリーに分類されているので現実感のない話や、登場人物にしかわからない様な感覚も多少はありましたがそこ皆様の想像力で補ってくださいね(≧▽≦)


むしろ、その辺を想像するのがSF小説の楽しみの一つですので!!(個人的楽しみ方)


小林泰三『失われた過去と未来の犯罪』

またまた、小林泰三さんの世界観全開の本作。


わざわざゾンビを殺す人間なんていない。』では、“全人類がゾンビウイルスに感染している”という世界で本格ミステリーをベースにその世界ならではのトリックを披露してくれました。


www.yamada-books.com


そして、『失われた過去と未来の犯罪』では、“全人類は突然、長期記憶の保存が出来なくなり、メモリーに頼った生活を強いられる”という設定です。


「こんな設定持ち出されたら読書好きとして読むしかないですよ小林先生っ!!!」


長期記憶が出来なくなるので、メモリーなしでは記憶は10分程度しか持たない、、、


「大忘却」以降に生まれた人は、そもそも長期記憶という機能が備わっていないので、メモリーなしでは生きたられないのです!!


ポイント「大忘却」とは、ある日突然、全人類に起こった記憶喪失。それを作品内では「大忘却」と呼んでいます。


ですが、手続き記憶や意味記憶はちゃんとあるので、読み書き、自動車の運転などはしっかりできるのです。


しかし、メモリーは外して10分も経てば、なぜ自分がここにいるのか、もっと言うなら自分は誰なのかすらわからなくなってしまいます。


「私」とは「肉体」のことを指すのか「記憶」のほうを指すのか


そう、これが大問題なんです。


全人類は、メモリーを外せば10分後には自分か何者かすらわからなくなってしまいます。



では、Aさんのメモリーを抜いて10分後にBさんメモリーを差し込むと、“体はAさんですが記憶はBさん”というようになってしまうわけです。


その場合、容姿はAさんですが記憶はBさんということになりますが、その人物は誰なのでしょうか??


法律上は、Aさんなのですが


Bさんは、自分の容姿は違えど、自分自身をBだと思っています。


もちろん記憶に関しても、完全にBさんのものですので、考え方や行動はBさんのそれです。


逆にAさんの記憶は一切ありません。


果たして、この状態であなたはAさんをAさんとして、BさんをBさんとして見れますか??



個人的には本作で「記憶」、「人格」についてとても考えさせられました。


「私」とはどうやって定義するのか


「私」とは何を根拠に「私」とするのか、本作で出てきた考え方は大きく分けて3つ。


考え方その1

「私」とは脳を持った「肉体」という考え方。


メモリーが変われど、「私」とはあくまで、その脳を持つ「肉体」の方であり、メモリーが変わっている間は他人「記憶」に体を乗っ取られている。という考え方。


考え方その2

「肉体」とは、“ただの入れ物”として認識し、「意識」や「人格」を持った、「記憶」こそが「私」であるという考え方。


考え方その3

「私」とは、「肉体」と「記憶」が一緒にあって初めて「私」といえる。


したがって、「記憶」と「肉体」がバラバラになった時点でそれは「私」ではない。


つまり、他人体に自分のメモリーが挿入されたらそれは「私」ではなく、全くの別人。または、新しい「私」になるという考え方。



確かに、どの考え方も理解はできるし、ある程度の説得力はあります。ですが、決め手としては弱いんです。


『失われた過去と未来の犯罪』では、こんな感じの話が多く出てきて、登場人物たちの葛藤が多くあります。


おわりに


第1章では、「大忘却」について詳しく書かれていますが


「大忘却」が起こった原因については“某国が行った核実験もどきの影響”とかなりザックリとしか書かれていません。


さすがに少し「あれ?」とは思いましたが、物語に影響はないので見ないふりして乗り越えました(;´∀`)



2章では、「大忘却」後の人類の話がされていて


「替えメモリー受験」をしようとした学生の話や交通事故で子供を亡くした父親の話。


さらには、双子の姉妹の話にメモリーの使用を拒否する集団の話。といろいろな場面の話があります。



そして、なぜか何人もの記憶が、思いが自分の中に存在している。


その理由と、その人物の正体が明らかになるラストは圧巻でした。


「あぁ~、そう来ますか小林先生!!」


と、思わず声に出してしまいました(*’ω’*)



設定や、オチなどで好き嫌いはわかれるとは思いますが個人的にはぜひ推したい作品でした!!


最後まで読んでいただきありがとうございます。では、次回の記事でお会いしましょう(^^)/