短編集

青崎有吾『早朝始発の殺風景』-伏線の密度、その回収が異常に濃い青春ミステリー

青崎有吾『早朝始発の殺風景』

 

  • ワンシチュエーション&リアルタイムで進行する
  • 高校生の彼ら彼女らの物語にミステリー要素を聞かせた青春密室劇
  • 伏線の密度とその回収がとにかく濃い

さて、平成のエラリークイーンと言われている青崎有吾さんの新刊『早朝始発の殺風景』が発売されました。

内容は、ワンシチュエーションかつリアルタイム。さらに、密室劇と3つのテーマで統一された連作短編集。

 

ちょっぴり不器用な高校生の登場人物たち。与えられたワンシチュエーションで少しの会話と小さな謎を通して変わっていきます。

その変化の過程には、青春特有のほろ苦さだったり、気まずさだったりがたっぷり入っているわけです。

青崎有吾『早朝始発の殺風景』


『早朝始発の殺風景』に収録作品は

  1. 『早朝始発の殺風景』
  2. 『メロンソーダ・ファクトリー』
  3. 『夢の国には観覧車がない』
  4. 『捨て猫と兄弟喧嘩』
  5. 『三月四日、午後二時半の密室』

上記の5編にプラス『エピローグ』を収録。

1.『早朝始発の殺風景』

午前5時35分―

とある事情から早朝始発の電車で学校に向かった加藤木(かとうぎ)が目にしたのは、あまり親しくないクラスメイト・殺風景(さっぷうけい)。

 

彼女は確か部活には入っていなかった。

もしかして恋人に会いに…。いやそれは違う気がする。

では、昨日は夜中からずーっと遊び歩き、睡眠をとるために早めに学校に?

いやこれも違う。彼女が唯一親しくしている人物は事情があり今は学校には来れていない。

 

それではなぜ殺風景はこんな早朝に電車に乗っているのか。

感想

早速ツッコミたいところが…

名前が”殺風景”って新しすぎませんか青崎さん!!

ですが、青崎さんが付けた名前なのでちゃんとした意味が込められているんでしょう。

 

さて、本題の感想はというと。

1編目からこのクオリティでこの先どんな傑作が揃っているのか楽しみというのが読後の印象。

本当に伏線の貼り方・回収が美しすぎる(*´д`)o

2.『メロンソーダ・ファクトリー』

真田(さなだ)と詩子(うたこ)とノギちゃんの3人はドリンクバーが安く、種類が充実しているのが唯一の長所のファミレスで放課後だらだらおしゃべりするのが日課。

だが、今日はいつもと違って今回はちゃんとした議題が。

第一回クラスTシャツ(=クラT)会議。そのために事前にクラス内でデザイン案を募集していたのである。

「デザイン案、集まったの?」とノギちゃん。

「クラス内で募集したところ一通だけ来ました。石川さんから」

「殺人的に少ないね」

「うん…。だから、私も一つ考えてきた。その二つの中から選ぼうと思います」

p.49より引用

というわけでA案とB案の2択からクラTのデザインを選ぶことになった。

 

このクラT会議で珍しく詩子が真田の意見に反対したことが原因でギクシャクしてしまうことに。

感想

些細な意見の対立から当人たちも予想だにしないほど気まずい雰囲気に。

青春をテーマにしている作品ではよく見られる王道のシチュエーション。

しかし、青崎さんの手に掛かればこの場面も一気にミステリーらしく変貌するのです。

 

「おっ、まじか…」と、つい声が出てしまう結末。しっかり注意深く読んで下さい。

3.『夢の国には観覧車がない』

幕張ソレイユランド。

(省略)

ソレイユはフランス語で太陽を意味する単語だそうで、マスコットのソレイユくんも太陽がモチーフになっているが、地元の中高生からはよく〈それなりランド〉と呼ばれている。

よくも悪くもそれなりの規模、それなりの値段で、それなりのアトラクションをそれなりに楽しめるから。

p.79より引用

というわけで、僕たちフォークソング部は3年生の追い出し会で〈それなりランド〉ことソレイユランドに来ていた。

 

追い出し会の主役である3年生の寺脇(てらわき)は密かに思いを寄せる葛城(かつらぎ)と最後の思い出を作って最後には告白を…。と計画していた。

だが、なぜ後輩でしかも同性の伊鳥(いとり)と観覧車に。

 

寺脇は次第に伊鳥の不審な行動に気付き、彼の意図を推測することに。

感想

……青春だな…

『早朝始発の殺風景』に収録されている短編で最も普通の青春している作品です。

やっぱり青春に恋愛は付きものですよね(^^♪

 

それに、最後の真相を導き出すロジック。これは全編共通で言えることですが鳥肌ものなので必見です。

4.『捨て猫と兄弟喧嘩』

両親の離婚が原因で離ればなれに暮らしている兄妹のお話。

学校帰りに友人から聞いた良いケーキ屋さんに向かおうと公園を横切った妹。

ベンチの下で見つけた1つの段ボール。そこには…

〈オスです。一歳。去勢済み。三種混合予防接種済み。病気等ありません。おとなしいです。拾ってやってください。すいません。〉

p.116より引用

仏頂面で小太りの猫が入っていた。

 

母親と妹が住むアパートはペット禁止。それに妹は猫アレルギーを患っていることから自宅で猫は飼えない。

そこで一軒家で父と2人で住んでいる兄に頼むことに。

返答は、即答で拒否。

 

そんな頭ごなしに否定する事ないじゃんか、馬鹿兄貴!!

感想

正直に言うと、冒頭の数ページで結末は見えていました。

後は「あ、ここ伏線だ」とか「ここがこうだから最後はこういう事なのか?」と予想しながらニヤニヤと楽しむだけ。

 

しかし、最後まで読んで驚愕…( ゚Д゚)

予想の倍は伏線忍ばせてるじゃん!!って感じです。

見事に「やられた!」感を味わうことが出来ました。

5.『三月四日、午後二時半の密室』

煤木戸(すすきど)さんはよりにもよって今日、学校を欠席した。

クラスで浮いているのは知ってるけど、せめて卒業式くらいはしっかり参加して欲しかった。

 

というわけで私、草間(くさま)は今煤木戸さんの家に卒業証書とアルバムを届けにやってきてます。

 

 

…気まずい。

私と煤木戸さんは全く親しい関係ではないのだけれど、クラス委員という役柄で仕方なく来ているのです。

 

けど、あれ?

煤木戸さん本当に風邪ひいてるの?

それに、この部屋何かおかしいよう…な?

感想

卒業式にほとんど会話をしていなかったクラスメイトの自宅に行く。

これほど気まずいシチュエーションはなかなか無いのでは?!

 

1つの疑問から入った推理が2つ目の疑問を呼び寄せ、最終的には美しいロジックで謎を解決。

物語全体にまとまりがあり非常に心地の良い読み心地。

読後感はとても爽快。気まずさが重くのしかかった体が軽くなるようなものがありました。

『早朝始発の殺風景』のマイベスト

ではでは、『早朝始発の殺風景』に収録されている短編のマイベストと発表します。

今回のマイベストは

1位『メロンソーダ・ファクトリー』

2位『早朝始発の殺風景』

3位『エピローグ』

となりました。

1位に選んだ『メロンソーダ・ファクトリー』は収録短編のなかでもずば抜けて伏線が濃密。

何度読み直しても伏線の回収漏れがなく、すべてが腑に落ちました。

 

ちなみに『エピローグ』は登場人物総出演。内容はお楽しみということで。

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