- 収録作品すべてに”叙述トリック”が使われている
- スッキリ見抜くもよし、騙されるもよし。とにかく前代未聞の短編集
”叙述トリック”と聞くと「あのアンフェアな後出しジャンケンみたいなトリックでしょ?」と考える人がいるかと思います。
では、最初に「この作品に収録されている短編は、全て叙述トリックを用いています」と断っていたらどうでしょう?
これだけで、だいぶフェアなお話になりませんか??
それが、本作『叙述トリック短編集』なのです。
ミステリー小説でよく用いられる1つの技法。
文章上の仕掛けによって、読者をミスリードし、読後の衝撃をもたらすトリック。
しかし、「叙述トリックを使っています」と断言していること自体がすでに致命的なネタバレなんですが(;^ω^)
ネタバレをされている状況でもなお、読者は騙されるのか。に挑戦した作品が本作です。
さて、みなさま思う存分叙述トリックをご堪能ください。
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Contents
似鳥鶏『叙述トリック短編集』
この短編集は『叙述トリック短編集』です。収録されている短編にはすべて叙述トリックが使われておりますので、騙されぬよう慎重にお読みくださいませ。
p.6より引用
というわけで、冒頭でも触れましたが、『叙述トリック短編集』は、あらかじめ叙述トリックが使われていることを断って始められています。
ページを開いて最初の文字がこれなのです。
こんな始まり方をする小説がこれまでにあったでしょうか。
…少なくても私が知る限り存在しません。
そんな、『叙述トリック短編集』の収録作品ですが…
- 『ちゃんと流す神様』
- 『背中合わせの恋人』
- 『閉じられた三人と二人』
- 『なんとなく買った本の結末』
- 『貧乏荘の怪事件』
- 『ニッポンを背負うこけし』
上記の通りです。
この6編には、どのタイプの叙述トリックが仕掛けられているのでしょうか。
1.『ちゃんと流す神様』
ある日、株式会社セブンティーンズ・総務部で事件(?)が発生した。
詰まっていたはずの女子トイレが、誰も何もしていないのに勝手につまりが解消。
溢れだしていた水も綺麗に掃除されていたというのだ。
さらに、用具室にあった掃除道具には使用された痕跡はない。
つまりが発生した時に女子トイレを使用した者は3人。
いずれも、すぐに出てきているためトイレを掃除している時間などなかった。
とすると、トイレのつまりが勝手に治り、溢れ出た水は突発的な何かで蒸発したとでもいうのか…
それとも、トイレの神様の仕業なのか…?
感想
ふむふむ、そういう仕掛けだったのか。
確かに叙述トリックとして、筋は通っているし、見事なお話。
そう、思って読んでいたところ…
あ、あれ…?
って、最初の1文字目からすでに騙されていたんかい!!
もはや、ぶっ飛びすぎていて笑いしか出てこなかったですよ(^O^)/
初っ端から似鳥ワールドはアクセル全開なのである。
2.『背中合わせの恋人』
大学生の堀木輝(ほりき ひかる)の通知に、SNSから1通の友達申請が。
「あなたをお友達と言っているユーザーがいます」というSNSならどこにでもある、機能の1つだ。
普段ならこんな通知はシカトするところだが、今日に限っては暇なので、そのアカウントのプロフィールを覗いてみることにした。
そこには、年齢性別、その他情報は一切なし。
ただ、「写真が趣味の学生です」というたった一言の文字と、ミニブログのURLが。
見知らぬアカウントのURLをクリックするほど危ないものはないのだが、プロフィール画像の美しい夕焼けの空に惹かれて、URLをクリック。
そこには、平松詩織(ひらまつ しおり)というユーザー名があり、輝の興味をそそる写真がいくつもあった。
この風景、どこかで見たことがあるぞ?
どこだ??
あ、ここって家から近所の…
感想
いやいやいや、普通に良い話なんかい∑( ゚Д゚ノ)ノ
逆にびっくりしましたよ!!
だって、1編目が世界がひっくり返るようなアレだったんですもん。
そりゃあ、2編目もそんなノリと思いますよ。
しかし、青春してるな~( *´艸`)
3.『閉じられた三人と二人』
海外の人里離れた山荘に閉じ込められた6人。
元々は、日本人2人が山荘にいたところ、後から、強盗4人が犯行後、逃げ隠れてきたのだ。
天候は、運悪く荒れ、電波も入らない。
いわば、クローズド・サークルになってしまった。
そして、事件が発生。
強盗達は山荘から逃げるための経路を確認しに出かけたところ、一味の1人が転落死。
日本人はそのころ、椅子に縛られていたため、犯行不可能。
同じく、強盗達も犯行はできなかった。
クローズド・サークルのなかで起こった不可能犯罪。
感想
ミスリードがうまい!!
恐らく、この『叙述トリック短編集』のなかで一番、叙述トリックとして素晴らしお話。
約20ページと、本作で一番ボリュームが少ない短編なのに、このクオリティ。
似鳥さんの技術が詰め込まれた短編といっても、過言ではないでしょう。
4.『なんとなく買った本の結末』
「あ、ミステリ読みました。別紙さん、クイズ出していいですか。私が最近買った本から」
p.148より引用
というわけで、暇を持て余した2人は、最近読んだミステリー小説の短編から、クイズを出し、真相を当てるという遊ぶを始めた。
血のついた「凶器」の石の他に、明らかに周囲のものと色や質感の違う石が四つほど散らばっている。大小あるがどれも人の頭を割るには充分だ。たまたま落石があたったとして、ちょうど人の頭を割るのに適度なサイズの石だけが合計五つ。人の頭の周辺に集中して落ちてくる確率など何億分の一だろうか。
p.154より引用
明らかに他殺の匂いがしますね。
結果的に容疑者は3人まで絞られるが、どの人物にもアリバイがある。
さて、どのような方法で被害者を殺害したのか。
感想
作中で、作中作を登場人物が解く。という、いかにも何かありそうな設定。
そりゃあもう、伏線らしき伏線がいたるところにありました。
ところが、結論には至れず…
まあ、あの結論なら、作中作だけをヒントに解こうとしていた私は、解けないわけだ。
おっと、これ以上はまずい…。
この短編の感想はこの辺で(´・艸・`;)ぁぁぁ
5.『貧乏荘の怪事件』
築55年の裕明荘は、塗装が剥がれた壁に歪んだ窓枠と、かなりガタが来ている。
その見た目から、周囲の住人から、「廃墟だ魔窟だ」と揶揄されている。
裕明荘は格安のためか、現在の入居者は、日本人、中国人、韓国人、タイ人、セネガル人、インドネシア人(ただいま行方不明中)と国際色豊かな場所だった。
そんな賑やかな、裕明荘で盗難事件が発生。
なんと、入居者の1人である・李(リー)君の「海参(ハイシィェン)」が盗まれてしまったのだ。
というか、海参って、そもそもなに(・・?
感想
国際色が豊かなせいか、かなりキャラクターのインパクトが強かったです。
シンプルな仕掛けで最後は「やられた!!」と口に出してしまうほど。
この感覚こそ、叙述トリックって感じでしたね。
ところで、海参は中国の高級料理で、干しナマコらしいです。
気になりすぎて、調べてみました。
6.『ニッポンを背負うこけし』
各地のモニュメントに小細工や落書きをして、世間を騒がせているHEADHUNTER。
どうやら、次の標的は全長6メートル以上ある、こけしのようだ。
そこで、近くの駅を24時間監視体制。
妖しいものがいたら無線で報告。そして、犯人かどうかわかるまで尾行する。
このように厳重な警備態勢が敷かれていたのだった。
しかし、こけしはものの見事に、落書きをされてしまった。
監視カメラには、妖しい人物は写っておらず、犯行の余地はなかったように思えた。
犯人はどうやって、こけしに落書きをしたのか。
感想
まさか、まさかの真実が判明します。
所々注意しながら読んでいた私は、薄々この事態は察しがつきました。
しかし、改めて「ここがこうで。こうだから~」と説明されると…
「あ、だからあの時、ああだったのか!!」と、ついベッドから立ち上がってテンション上がりまくり。
とりあえず、戻って確認…
「あ、ここもそうだったのか」
「お?ここもだったのね!!」
っと確認すればするほどテンションが上がっていく謎の現象が(;^ω^)
まとめ : 『あとがき』がずば抜けて面白い
詳しく書けないのが残念ですが、『叙述トリック短編集』は、あとがきをきちんと読みましょう。
なぜなら、一番面白いからです( *´艸`)
そして、あとがきは必ず最後に読んで下さい。
さらに、本作は連作短編集なので、読む順番はしっかり守ってくださいね♪
そうでないと、『叙述トリック短編集』を最大限に楽しめません。
それと、傍注にも注目です。
トリックとは全く関係ありませんが、個人的にとても笑えました!
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