知念実希人『祈りのカルテ』-気づけば泣いている連作医療ミステリ

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やはり、この手の繊細な心情を描くミステリーを書かせたら知念実希人さんの右に出る者はいませんね(^^♪

 

本書、『祈りのカルテ』はタイトルの通り

勿論医療ミステリー

 

しかも、『祈りのカルテ』の主人公は諏訪野良太(すわのりょうた)です。

 

螺旋の手術室』では、主人公・冴木裕也の親友として登場したのですが

まさかの『祈りのカルテ』では主人公!!

 

『螺旋の手術室』と同じく『祈りのカルテ』でも舞台は、純正医大附属病院。

 

時系列で言うと『祈りのカルテ』→『螺旋の手術室』となっていますが別にシリーズものではないので読む順番とかは気にせず好きな方から読んでください。

 

知念実希人『祈りのカルテ』

 

 

純正医大附属病院に研修医として勤める諏訪野良太

 

純正医大では、2年間の初期臨床研修を受けることになっています。

 

その2年間で医者としての基礎知識をつけるために内科や外科・小児科・産婦人科など、様々な科を数カ月ごとに回っていく

 

諏訪野は幼い頃、特殊な家庭環境で育ったため

人の感情の変化に良くも悪くも非常に敏感

 

『祈りのカルテ』では、諏訪野がどんな科でどんな経験をしたのか、また、そこで出会った患者たちの背景に潜む謎を解き明かしていくお話し。

 

『祈りのカルテ』の収録作品!!!

 

本書は、短編小説で

どのお話も、患者または諏訪野の感情が非常に繊細に書かれています。

 

あまりにもリアルなのでフィクションではなく実話ではないのかと疑うほど

 

『祈りのカルテ』の魅力を余すことなく伝えたいため

いつものように、おすすめの作品だけ紹介するのではなく

すべてのあらすじや感想を紹介していきたいと思います。

 

初出はどの作品も『小説 野生時代』

 

1.『彼女が瞳を閉じる理由』 2014年2月号

 

2.『悪性の境界線』 2015年3月号

 

3.『冷めない傷跡』 2017年 2月号

 

4.『シンデレラの吐息』 2017年 5月号

 

5.『胸に嘘を秘めて』 2017年 11月号

 

以上5編収録された短編小説です。

 

前置きが長くなりすぎるとつまらないので

パッパッとあらすじ紹介に進みましょうか!!

 

1.『彼女が瞳を閉じる理由』

 

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諏訪野が精神科で研修していたとき

とある患者が救急搬送されてきた。

 

山野瑠香、26歳女性、多量服薬で意識混濁

 

救急搬送なのに、いつもの緊張感がないことに違和感を感じずにはいられない諏訪野

 

それもそのはず

 

瑠香は、1,2カ月に1回早い時には3週間に1回定期的に来るいわゆる常連さんなのだ。

 

毎回、自宅で大量に薬を飲み決まって自分で救急車を呼ぶ

そして、入院するときまって5日にお家に帰る

 

んで、またすぐに運ばれてくる。

 

原因は、数年前に分かれた旦那の気を引くためだと看護師は言うが本当にそうなのだろうか?

 

瑠香の腕にある煙草を押し当てたような火傷

そこに刻まれた文字は元旦那の名前だった。

 

なぜ、5日に退院するのか、彼女の抱える悲しい謎とは??

 

女の細い上腕部には、タバコを押し当てたような点状の火傷がいくつも刻まれていた。

そのうちいくつかは、ごく最近につけられたものなのか、赤黒く爛れている。

 

火傷が文字の形になっていることに気づき、背筋が冷えていく。

 

『あ き ら』。女の白い腕には、痛々しい火傷でそう記されていた。

 

P.13より引用

 

2.『悪性の境界線』

 

今回は、外科研修中での物語

 

純正医大の外科と言えばもちろん冴木真也でしょ!!

『螺旋の手術室』で書かれていた通り、面倒見がよく優しい医者姿が描かれていて少し安心しました。

 

読んでない方もいるのでこの話はここでやめっ!!

 

早期胃癌と診断されて手術を控える近藤玄三

 

早期発見ということもあり比較的にリスクの低い手術を提案し玄三もそれを受け入れていたのだが

病室でスーツ姿の男と何かを話してから提案を拒否

 

代わりに、玄三が提案した手術方法は

リスクの高いお腹を開けて胃を摘出する手術だった

 

しかも、今週中に手術をしろという難題付き

 

玄三は80歳近い年齢

開腹手術が自分の身体に大きな負担となるのは承知のはず

 

では、なぜ身体への負担が大きい手術を望んでいるのか??

 

リスクが低い手術を拒否して

逆にリスクの高い手術をしたがっているという摩訶不思議な患者

 

でも、しっかりとした理由と覚悟がそこにはありました!!

 

腹を括って行動に出た玄三もかっこよかったのですが

冴木真也は終始かっこよすぎる

 

『螺旋の手術室』を読んだ方は、絶対刺さる作品だと思います。

 

「退院する」

「は?」

「だから、今週中までに手術をしてくれないって言うなら、今すぐに退院して、他の病院を探す。今週中に手術をしてくれる病院をな」

 

p.69より引用

 

3.『冷めない傷跡』

 

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右下腿の裏側に深い火傷を負った守屋春香が皮膚科に搬送されてきた。

 

家で料理をしているときに手を滑らせてそのまま右足の膝から下に熱々の油がかかってしまう…

 

想像しただけで痛そうですね

 

しかし、よーく考えてみてください

普通、料理中に手を滑らせて油がかかるなら右下腿の裏側ではなく表側ですよね??

 

諏訪野はこの点に気付き、春香が嘘をついていると確信します。

 

挙句の果て、春香の火傷が搬送後の写真と比べてわずかに広がっている

 

春川なぜ火傷した本当の理由を隠しているのか?

入院中にどうして火傷が広がったのか??

という、ホワイをメインに解いていくお話し

 

基本的にネタバレは避けたいのであまり深く言えません。

 

なので、後は、読んでからのお楽しみってことでお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

 

「……この部分。確かに、ここの火傷が新しくできているわね」

 

桃井は諏訪野が撮った写真の一部を指す。

間違いなく、その部分に新しい火傷が生じ、傷の大きさがわずかに増していた。

 

p.114より引用

 

4.『シンデレラの吐息』

 

今回の話は、小児科での家族愛溢れる感動ストーリー

 

姫井姫子、8歳

かなりひどい喘息発作を起こし救急搬送

 

昔から喘息を持っていましたが、ここ数年は薬を服用し

発作を起こしていなかったが、1年ほど前から薬を飲んでいるにもかかわらず度々発作を起こしている。

 

念のため採った採決の結果

テオフィリンを示す数値がゼロだった!?

 

テオフィリンというのは気管支喘息などの疾患に処方される医薬品です。

 

薬は、朝は母親、夕は父親か母親の手が空いている方が姫子ちゃんに薬を渡し飲ませているといいます

もちろん、その薬の中にはテオフィリンも含まれているわけですが

 

そこで嫌でも考えてしまう最悪の推理

 

母親or父親のどちらかがわざと姫子ちゃんに薬を飲ませていなかったのでは??

 

そして、姫子ちゃんの病室のごみ箱から数個の錠剤が…

 

父親か、母親か、あるいは姫子ちゃん本人か、はたまた全く別の人物か―

 

本作は、アイディアは普通でも

小説家らしく、文章で魅せてくれました!!

 

ただの泣ける小説なんかじゃなく

しっかりとしたミステリー要素も織り込んでいて楽しく読ませていただきました。

 

5.『胸に嘘を秘めて』

 

純正医大26階に入院する四十住絵理(あいずみえり)

 

純正医大の26階は完全個室、セキュリティ万全

その分、個室料もお高い

まあ、VIP病室ってやつですね

 

絵理も3年くらい前に女優などで大活躍したVIPです

 

絵理が苦しむ病は、心臓の筋肉細胞が変化して薄く伸びていく原因不明の病気“特発性拡張型心筋症”

 

現在の医学では、心臓移植をしないと完治できない重病です。

 

今、病気のことを知られると絵理が復帰したとき仕事に響くと世間にはひた隠し状態

 

そのまま、アメリカの有名病院で心臓移植を受けた後何事もなかったかのように芸能界に復帰する算段だったのですが

 

マスコミに絵理が入院していることをリークされてしまいます。

 

純正医大の26階のセキュリティは万全

職員もマスコミに情報をリークするような人はいない

 

となると、誰がマスコミに情報をリークしたのでしょうか???

 

またまた涙腺崩壊確実の家族愛が冴えるお話し

 

帯の後ろに書いている「ふと気づけば泣いていた。」というのは本作のために考えられた謳い文句だと確信しました。

 

まさに知念さんらしい作品で最初の一行を読んで以降手が止まらない!!!

 

そして、最後に1ページだけある“エピローグ”への繋げ方も完璧です

 

おわりに

 

『祈りのカルテ』で一番のおすすめは??と問われたら

迷わず最後に収録されていた『胸に嘘を秘めて』と即答してやりますよ!

 

もうダントツです

 

私のストライクゾーンにど真ん中剛速球を投げ込まれて興奮するなというのは無理な相談

 

世界観への入りやすさやストーリー展開

思わず涙腺が緩む文章校正などなど

 

個人的には『崩れる脳を抱きしめて』に勝るとも劣らない魅力を秘めています。

 

次は、冴木裕也と諏訪野良太の二人が活躍するお話しもよんでみたいですね

 

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